もやもや

小学2年の時におれは自転車に乗れなかった。おれ専用の自転車も無かったし、今以上に小学2年のおれは阿呆であったので自転車にのる自分という画がいまいち想像出来なかったのだ。別に不便でも無かったし、自転車に乗れないから他のガキから浮いている、という感じも無かったのではないか。しかし小学2年の夏ぐらいか。「今度の土曜日にあるテストに受かれば放課後も自転車に乗って良いですよー」と吉田先生が言ったのでおれは驚いた。当然ながら土曜日のテストはおれは受からなかったし、28人いたクラスで自転車に乗れなかったのはおれを含めて3人だった。
このエントリは別にかくかくしかじかのエピソードがあって、おれは無事自転車に乗れるようになりましたよー。という話では無いので、2週間にわたる親父との特訓であるとか、小学2年のクソガキの笑顔とかそういうのは適当に脳内で補完していただきたい。ただ、小学2年のおれが自転車に乗れるまでの劣等感を持ち続けた2週間、どこかもやもやしたものが心の奥底にあり、その当時のおれは、このもやもやは自転車に乗れたら無くなるんだ。と思っていたのだが、自転車再テストを受け、合格してやったーと思ったその日の夜、あれ?まだ、もやもや有るじゃねえの。と思ったのである。
故郷を離れる決心をした時は、そこにある感情を、古ぼけた街への苛立ちと思っていたのだが、故郷を離れた地では、あーあれはただのもやもやだったのかなあ、人にはやっかいなものがあるのですねえ、と思ってたりもした。そして今日、おんぼろワンマンカーにごとごと揺られ、海やら山らや田圃やらを見ていると、ふともやもやしたものがあり、おれは「おーもやもややー」と変な関西弁で思ったのである。
今もキーボードをかたかたと打ちながら、今はもやもやあるかいなあ?と心の奥底か、はたまた心臓あたりの神経か、そのあたりをもぞもぞさすってみると、やっぱりあるのである。もやもや。しかしまあ、いつの間にか忘れてしまうもやもやとの再会を、今日の昼は上手いこと出来たんじゃあないかと思っているが、そうでもないかな?